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座っている時間が長いほど生活習慣病と関わる ―日本人の大規模調査を用いて解析―

京都府立医科大学 大学院医学研究科 地域保健医療疫学のプレスリリース2020年 05月 13日

■研究の概要■
座っている時間(座位時間)が長いことで、血行不良と代謝の低下を引き起こすことにより、死亡率増加や循環器疾患発症と関わることがいくつかの国から報告されています。一方、日本人の解析対象者が1万人を超えるような大規模調査としては、仕事中に座っている時間と死亡率やがん罹患、テレビ視聴時間と肺塞栓症の死亡率の関係が報告されています。しかし、他国と比較して、日本国内での座位時間に着目した研究は限られていました。そこで今回は、6万人を超える日本人のデータを用い、日中の座位時間と生活習慣病(高血圧、脂質異常症、糖尿病)とその関連因子の関係を、性別および年代別(35–49歳,50–59歳,60–69歳)に検討しました。年齢、居住地域、喫煙の有無、飲酒の有無、余暇時間中の身体活動の影響を考慮して解析した結果、下記が明らかとなりました。

①年代が上がるほど、日中の座位時間の長さと高血圧、脂質異常症、糖尿病の有病率が関係する。
②座位時間が長いほど、肥満度(BMI)、血圧(収縮期、拡張期)、中性脂肪、non-HDLコレステロールなどの値が高くなる

国際標準化身体活動質問票が作られた2011年のデータによると、日本人の座位時間は、世界で一番長いという結果が出ています。一方、日本人を対象とした大規模研究は少なく、本研究は日本人の日中の座位時間と生活習慣病との関係を性別および年代別(35–49歳,50–59歳,60–69歳)で解析した初めての研究です。今後、本研究を踏まえた日中の座位時間の減少を行うことにより、生活習慣病の予防と進行抑制に貢献することが期待されます。この研究成果は、2020年4月8日に国際学術雑誌「Journal of Atherosclerosis and Thrombosis」に掲載されました。

【研究方法】
日本多施設共同コホート研究(J-MICC study)の全国11研究拠点の調査に参加した、虚血性心疾患と脳卒中の既往歴がなく、データに欠損値がない62,754名(男性27,930名、女性34,824名)を解析対象者としました。睡眠時間を除く日中の行動時間は、国際標準化身体活動質問票をベースとした質問票を用い、日中の座位時間の長さと、生活習慣病(高血圧、脂質異常症、糖尿病)との関係を性別および年代別(35–49歳,50–59歳,60–69歳)に検討しました。日中の座位時間は、質問票をもとに以下の4群に分けて解析を行いました。
①5時間未満 ②5-7時間 ③7-9時間 ④9時間以上
調整因子は、年齢、居住地域、飲酒の有無、喫煙の有無、余暇時間の活動量(METs)としました。
今回の研究では、座位時間の長さと、生活習慣病関連因子である肥満度(BMI)、血圧(収縮期、拡張期)、中性脂肪、HDLコレステロール、non-HDLコレステロール、HbA1cとの関係を見るため、データがある35,953名(男性17,109名、女性18,864名)のデータを解析しました。

【研究結果】
年齢、居住地域、飲酒の有無、喫煙の有無、余暇時間の活動量の影響を考慮して解析した結果、1日の座位時間5時間未満の群と比べて、座位時間が長くなると、男性では、高血圧(最大9.6%増)、脂質異常症(最大37.7%増)、糖尿病との関係(最大6.7%増)が認められました。女性では、脂質異常症との関係(最大25.2%増)が認められました。
座位時間の長さと、生活習慣病関連因子(BMI、収縮期血圧、拡張期血圧、中性脂肪、HDLコレステロール、non-HDLコレステロール、HbA1c)との関係では、年代によって異なるが、男性では全ての項目で、女性ではHbA1c以外の項目で関連が認められました。男女ともに年代が上がるにつれて、座位時間の長さと関連する生活習慣病関連因子の項目数が多くなることが認められました。
60代男女の血圧(収縮期)や中性脂肪をグラフ化してみると、座位時間5時間未満から9時間以上にかけて上昇していることがわかります。これらのことから、座位時間の延伸は、現在の生活習慣病(高血圧、脂質異常症、糖尿病)の有無とも関係しますが、生活習慣病の各因子とも関連していることから、今後の生活習慣病発症への影響も示唆されます。

■発表論文■
雑誌名: Journal of Atherosclerosis and Thrombosis誌
論文名: Sedentary Time is Associated with Cardiometabolic Diseases in A Large Japanese Population: A Cross-Sectional Study
掲載日:2020年4月8日

【研究者のコメント】
 これまでの研究から、座位時間が与える健康への悪影響については、ほぼ確実と言えます。そのため、他国では身体活動のガイドラインなどで、座位時間を少なくするよう提言しています。一方、国内では、座位時間に関する大規模研究の報告は限られています。本研究は日本人の日中の座位時間と生活習慣病との関係を性別および年代別(35–49歳,50–59歳,60–69歳)で解析した初めての研究となります。
 健康日本21(第2次)では、国民の平均血圧が2 mmHg低下することにより、循環器疾患全体では2万人の死亡が予防できると予測しています。 60代の座位時間5時間未満と9時間以上で比較すると、血圧(収縮期)は、男性が平均値で2mmHg (133.6mmHg→135.6mmHg)、女性が3.4mmHg( 135.0mmHg→131.4mmHg )異なりました。個人のデータであれば、血圧などが数mmHg異なっても測定誤差のようにみえるかもしれません。しかし、今回の解析対象者は虚血性心疾患と脳卒中の既往歴がなく、年齢差もない、座位時間の違いだけの集団間での変化ということになり、その集団における疾患発症率に対する影響は大きいです。日中の座位時間の減少は、集団全体(国民全体)の生活習慣病の各因子を低い方向にシフトさせるポピュレーション戦略に繋がることが期待されます。
 また総務省統計局の職業別就業者労働力の調査結果より、職業別就業者の中で、事務従事者が一番多く、昨今のテレワーク普及により、今後も在宅業務による家庭内デスクワークの増加が予測されます。在宅業務は、通勤時間が削減されるため、身体活動の低下に繋がる可能性があります。スタンディングデスクの導入などは有効だと思いますが、難しい方も多いと思います。座位時間を中断することの重要性も報告されているため、こまめに動くことで連続した座位時間をなくす心がけを持っていただければと考えております。

本件に関する問い合わせ先

京都府立医科大学 大学院医学研究科 地域保健医療疫学
小山 晃英 (こやま てるひで)
TEL:075-251-5789
E-mail: tkoyama*koto.kpu-m.ac.jp
*を@としてください。

ジャンル
調査・研究結果
業界
美容・医療・健康
掲載日
2020年 05月 13日
タグ
高血圧 生活習慣病 座っている時間 血圧 中性脂肪

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