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メガソーラー発電施設の寿命を延ばし、発電コスト低減につながる、太陽電池モジュールの電圧誘起劣化を簡便・低コストで抑制する方法を発明

国立大学法人岐阜大学のプレスリリース2019年 03月 08日

岐阜大学工学部電気電子・情報工学科の大橋史隆助教らは、メガソーラー発電施設で最も普及している結晶シリコン系太陽電池モジュールの発電能力を短期に大幅に劣化させる現象である「電圧誘起劣化(Potential Induced Degradation)」(以下「PID」)を、簡便・低コストで抑制する方法を発明しました。大橋助教らは、太陽電池モジュールに液体ガラスで作製したガラス層を挿入し、セルを包む封止材(EVA)とカバーガラスの間にガラス層を挿入した場合、ガラス層がない場合と比べて、顕著なPID抑制効果を確認しました。また、ガラス層をカバーガラスの表面に挿入した場合でもPID抑制効果を確認しました。本発明は、太陽電池モジュールの生産工程におけるPID抑制加工や、設置済みのメガソーラー発電施設におけるPID抑制対策に繋がると期待されます。

本発明について、大橋助教は第66回応用物理学会春季学術講演会(会場:東京工業大学 大岡山キャンパス)において2019年3月10日(日)15:15からW611会場で口頭講演を行う予定です。

●電圧誘起劣化(Potential Induced Degradation:PID)の原因

太陽光発電に用いられる太陽電池モジュールは様々な原因によって発電能力が年々劣化します。PIDは高電圧で運用されるメガソーラー発電施設において、最も普及しているp型結晶シリコン※1系太陽電池モジュールに頻発すると言われている、太陽電池モジュールの発電能力を短期に大幅に劣化させる現象です。PIDは太陽電池モジュールのフレームもしくはカバーガラスと太陽電池(以下「セル」)の電極の間に、何らかの原因によって高い電圧が発生し、セルの電圧がマイナスである場合に、カバーガラスに含まれるナトリウム(Na)がセル内部に移動するために起こると考えられています(図1)。温度、湿度、電圧などの条件が影響しているとも考えられています。なお、太陽電池モジュール部材中におけるナトリウムの移動過程の詳細は明らかになってはいません。

●発明の内容と試験結果

近年、PIDの発生メカニズムとして、セル表面の反射防止膜(Anti-Reflection Coating)(以下「ARC」)に高い電圧が加わることが劣化に大きく関係していると議論されています。そこで大橋助教らは、ARCに高い電圧が加わることを防ぐために、液体ガラスで作製したガラス層を高抵抗層として太陽電池モジュールに挿入し、これに電界を集中させる方法を着想しました。ガラス層は可能な限り石英に近い組成が好ましいです。

通常のガラス層がない場合とカバーガラスとセルを包む封止材(EVA)の間(図2(a))に挿入した場合、カバーガラスの表面(図2(b))に作製した場合を比較して、その効果を確かめました。

太陽電池モジュールに短時間で高い電圧をかけてPIDの状態にする試験(PID試験)を行った結果、ガラス層がない場合(図3(a))は大きく劣化したのに比べて、ガラス層をカバーガラスとEVAの間に挿入した場合(図3(b))は、PID発生を遅延させる効果※2が見られました。また、ガラス層をカバーガラスの表面に作製した場合(図3(c))でも、ある程度のPID抑制効果が見られました。

また、共同発明者である石川県工業試験場にて、電界強度分布のシミュレーションを行いました。図4(a)は通常の太陽電池モジュール、(b)はカバーガラス(ソーダライムガラス)とEVAの間にガラス層を形成した太陽電池モジュールです。両者を比較すると、(a)はカバーガラス、EVA、ARCがそれぞれ水色、黄緑色、赤色になり、電界強度が強くなっています。(b)ではガラス層が赤色になり、電界強度が高くなっている(電界分布が集中している)一方、カバーガラス、EVA、ARCが青色または黄色で、電界強度が低いままです。同様の結果は、ガラス層をカバーガラス表面に形成した場合でも確認できています。

これらの結果から、ガラス層をカバーガラスとEVAの間に形成した場合、PIDを顕著に抑制することが可能であり、またガラス層をカバーガラス表面に形成した場合でもPIDを抑制することが可能であると考えられます。

●発明の意義

本発明によるPID抑制技術は、太陽電池モジュールの部材や構造を大きく変えずに導入することができます。高抵抗層形成用材料として液体ガラスを用いることから、多様な形状および大面積の太陽電池モジュール部材への導入が容易です。太陽電池モジュールの生産工程においてEVAとカバーガラスの間にガラス層を挿入するPID抑制加工や、設置済みのメガソーラー発電施設のカバーガラス表面にガラス層を塗布するPID抑制対策として導入されることが想定されます。本発明は太陽光発電システムの寿命延長、発電コスト低減に直結し、太陽光発電の普及の一助となることが期待されます。

●謝辞

本研究はNEDOプロジェクト(平成27年度~平成31年度)の一環として行われました。

※1:p型結晶シリコン:一般的な太陽電池はn型半導体(n型シリコン)とp型半導体(p型シリコン)を積み重ねた構造です(図5)。太陽電池の表面に光が当たると、プラスとマイナスを持った粒子が発生し、マイナスの電気はn型半導体へ、プラスの電気はp型半導体へ移動します。p型半導体とn型半導体の表面の電極どうしを繋ぐと電気が発生します。通常はn型半導体ではPIDは発生しにくいです。

※2:PID発生時間を遅延させる効果:電流電圧特性の図は、X軸とY軸の交点と曲線で囲まれる面積の広さが発電能力の高さを表します。図3(b)のPID試験6時間後の方が、図3(a)のPID試験6時間後よりもこの面積が広いです。そのため、PID発生を遅延させる効果があると言えます。

【研究者プロフィール】
大橋 史隆 岐阜大学 工学部 電気電子・情報工学科 助教
2004年9月- 2009年9月 University of Surrey Advanced technology institute Nanoelectronic centre
2004年9月- 2009年3月 サリー大学 大学院博士後期課程 物理科学工学専攻
2009年8月- 2011年5月 岐阜大学 産官学連携研究員
2011年6月- 2013年12月 岐阜大学 特任助教
2014年1月- 2018年3月 岐阜大学 テニュアトラック助教
2018年4月-現在 岐阜大学 工学部 助教

ジャンル
調査・研究結果
業界
素材・化学・エネルギー・運輸
掲載日
2019年 03月 08日
タグ
太陽電池 太陽光発電 自然エネルギー メガソーラー PID

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